セレッソ大阪スポーツクラブ

桜なでしこ物語

桜なでしこ物語【第2章】| 第32回 キャプテン・林 穂之香の奮闘

2020.06.16
キャプテン・林 穂之香の奮闘

 2019年8月3日に行われたリーグカップ決勝は、リーグ後半戦に向かうひとつのターニングポイントになった。

 決勝進出にこぎつけるまでのグループリーグは簡単な戦いではなかった。第1節はASハリマアルビオンに引き分け、続く愛媛FCレディース戦は敗戦。第3節のバニーズ京都SC戦も先行される展開だったが、なでしこジャパンのワールドカップ直前キャンプにトレーニングパートナーとして参加していた宝田沙織が、キャンプを終えたその足で合流。途中出場するとハットトリックの活躍を見せて、逆転勝利にこぎつけた。

 そのあとも決して楽な試合ばかりではなかった。「ケガ人が多くて、チームを作りこむことが難しかった中で、いろいろな選手がメンバーに入ってきて、ポジションが変わったり、1人の選手が複数のポジションをしたり、いろいろなトライができた」。岡本三代監督の言葉通り、若い高和芹夏、浜野まいか、小山史乃観ら、さらに大阪学芸高等学校の選手も出場してそれぞれが活躍。総力戦でたどり着いたのが、ちふれASエルフェン埼玉との決勝であった。

 公式記録に記された気温は35.7℃。会場の味の素フィールド西が丘は酷暑のさなかにあった。前後半ともクーリングブレイクが設定され、暑さとも戦うことに。この時点でリーグ3位とセレッソより上位につけるちふれに対し、「非常に戦術的に戦ってくる」と警戒していた岡本監督。予想通り前半から相手がペースを握り、セレッソが守勢に回る展開になった。

 よく耐えたものの後半に入って失点しリードされると、浜野まいかが送り込まれた。そして、少しずつ流れを引き寄せつつあったタイミングでのクーリングブレイク。これがさらに好転をもたらした。「ブレイクのなかで、ベンチの選手も『最後まで走り切ったらいける』と声をかけてくれて、もう一度気合が入った」(林穂之香)。フレッシュな気持ちとパワーをチャージして、逆転に成功する。

 北村菜々美のシュートのこぼれを林が押し込み同点。逆転弾も林だった。相手のクリアを冷静にとらえた鮮やかなゴールに、「自分で点を取ろうという意識は昔より強くなっている。ゴールに向かう姿勢はよくなっていると思う」(林)と、振り返った。

 
途中出場した浜野。スピードあるプレーで相手をかく乱した

 
苦しみながら逆転! 喜びの輪が広がった
 
声を出してチームメイトを鼓舞。林のキャプテンシーはこの試合でも光った
 
 8分間の長いアディショナルタイムもしのぎ切り、勝利。「2年前もここで優勝して1部昇格まで行けた。この勢いをうまく利用して、1部で通用するようにもっとレベルアップもしたい」。躍動したキャプテンは言葉を弾ませた。
 追いつき、勝ち切るたくましさを再び見せ始めたセレッソ大阪堺レディース。タイトルを手に、1部復帰に向け決意を新たにしていた。

 
2年ぶりのタイトル獲得! 酷暑の中で共に戦ったサポーターと

 
キャプテンの林が2得点。優勝に大きく貢献した

 文・横井素子