2019シーズンのチーム集合写真。
岡本三代監督のもと、なでしこリーグ2部に参戦する。
【はじめに】「桜なでしこ物語」は2010年からのセレッソレディースの歩みと成長の様子をご紹介するコラムです。2018年11月発行の『ハナサカクラブ誕生10周年記念本 みんなで育てる、ずっと支える』に掲載された「セレッソレディースの歩み」をベースに、その後のエピソードなどを加筆する形で掲載していきます。
2010年に発足した「セレッソ大阪レディース」にとって、2019年は活動10年目にあたるシーズンです。今季はなでしこリーグ2部で戦うセレッソ大阪堺レディース、2年目のチャレンジリーグに臨むセレッソ大阪堺ガールズ、そしてセレッソ大阪堺アカデミー。桜なでしこたちはまだまだ成長の真っただ中。その様子を読者の皆様とともに見守っていきたいと思います。ご愛読いただけると幸いです。
※文中の肩書き・役職などは、取材当時(2018年6月)のものです。
◆第1回 季節はずれの吹雪の中で始まった
降りしきる雪の中、なでしこリーグ1部初陣のピッチに入場する選手たち。
2018年3月21日、東京・味の素スタジアム西競技場は季節はずれの雪に見舞われていた。セレッソ大阪堺レディースのなでしこリーグ1部初陣、日テレ・ベレーザ戦。ウォーミングアップが始まると降雪は激しさを増し、キックオフのころには吹雪の様相さえ呈していた。が、選手たちの気持ちはそがれることはなく、全力でチャンピオンチームに向かっていった。
立ち上がりから運動量をベースにしたアグレッシブな守備を見せ、相手陣内でボールを持つことに成功。25分には林穂之香からのパスを受けた野島咲良が右サイドからクロスを入れた。ゴール前で混戦となり、相手のオウンゴールによりセレッソが先制。勢いをしっかり得点に結びつけた。前半終了間際、セットプレーの流れから失点し1-1とされるが、期待の高まる45分であった。
後半に入ると、次第に相手の出足が早くなり、ボールを握られる時間が増えた。53分にはボールをつながれて失点、逆転を許した。終盤にはダメ押し点を取られ、1-3で試合終了となった。
チームを率いる監督の竹花友也は、
「臆することなく戦えたことはよかったが、それを90分間続けていくというのは課題です。局面、局面で経験の差がかなり出たかなと思います」
と、分析した。キャプテンを務める林穂之香は、
「絶対に自分たちが勝つんだ、という気持ちで臨めたことは大きかった。前半は気持ちの面でも上回っていて、得点までいけたことはよかったですが、後半からは巧さでかわされてしまい失点してしまった。これから積み上げて改善していかなければいけないと思います」
と、冷静に振り返っていた。そして、
「1年後、2年後、3年後に、このリーグのトップを走れるようなチームになる、という目標があります。そのスタートとして、今日のこの試合はひるむことなくどんどんいってやろう!と思ってプレーしました」
林の言葉に強い決意がにじんでいた。
強豪を相手に気持ちを前面に出したプレーを展開した。
リーグ3連覇中の絶対王者である日テレ・ベレーザに思い切りぶつかり、手応えとともに課題や差を感じることができたこの試合。選手たちの意気込み、そしてピッチでの気迫あふれるパフォーマンスは、雪をも溶かしてしまうほど熱いものであった。
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試合サマリー 【その後】 吹雪の中でのなでしこリーグ1部デビューはあまりにも印象的でした。サッカーに携わって25年以上ですが、カラーボールを使っての試合を現場で観たのは初めて。そして、試合後の林穂之香の言葉は今でも耳に残っています。
「1年後、2年後、3年後に、このリーグのトップを走れるようなチームになる、という目標がある」
苦しいとき、目標を見失いそうになるときによりどころになるような、すばらしいコメントでした。
文・橫井素子