セレッソ大阪スポーツクラブ

桜なでしこ物語

桜なでしこ物語|第21回 セレッソ大阪堺レディース、初めてのタイトル

2019.11.11
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セレッソ大阪堺レディース、初めてのタイトル

 躍進した2017年、セレッソ大阪堺レディースは初タイトルを獲得した。なでしこリーグカップ2部である。東西に分かれて行われたグループリーグでは、7勝1敗と圧倒的な強さを見せて1位になり、8月12日の決勝に進出。相手はリーグでもしのぎを削った日体大FIELDS横浜だった。

「選手たちは勝つことしか考えていない。日体大は簡単な相手ではありませんが、選手たちには『自分たちは若いので、成長のスピードが絶対に早い。相手に追いついて、追い越せるのかすごく楽しみだし、勝ち取ることも自分たちでやらなければいけないこと』と話しました。ここまで来たら、内容はともかく、勝たないといけないとみんなで言い合って気持ちを高めています。先制できれば、いい流れで行ける。先制点が絶対の鍵です」
 監督の竹花友也の言葉から、意気込む選手たちの様子がうかがえた。

 試合はまったくの互角の戦いになった。0-0まま試合は後半へ。先手を取ったのは、セレッソのほうだった。決めたのはレディースの背番号8、松原志歩。試合前日、「相手が日体大でよかったです。やる以上は強い相手と対戦したかったし、リーグ戦では負けている相手だけれど、みんな『日体大に絶対勝ちたい』という思いはずっとあります。相手は強いけれど、負ける相手ではない、絶対勝ちます。相手はうまいし、経験豊富な選手が多いので、簡単な相手ではないけれど、絶対にこっちにもチャンスがあると思う」と話していたエースが、矢形海優の右サイドからのクロスに合わせて、ゴールネットを揺らした。

 が、その数分後にDFのパスミスからボールを奪われ、飛び出したGKがファウル。PKを献上してしまった。そのPKはGK山下莉奈がいったん止めたものの、こぼれ球を押し込まれ追いつかれた。嫌な流れだった。「今までなら、ああいう形でPKになったら落ちこんでしまっていた」(竹花)が、気持ちは切れなかった。結局90分では決着がつかず、PK戦へ。ここでも集中力は高く保たれ、勝ちたいという気迫は相手を上回っていた。
「今までならああいう形で追いつかれてPKとなると、蹴るのを嫌がる選手が多かった。でも今日は名前を呼べばすぐに力強い返事が返ってきた。場数を踏んできて、メンタル面も強くなったんじゃないかと感じました」とは、試合後の竹花の言葉だ。

 相手の5人目のキッカーが失敗したのに対して、セレッソは筒井梨香、脇阪麗奈、宝田沙織、林穂之香、そして最後の松原志歩まで全員が成功。「監督から『最後は気持ちを乗せて蹴ったら絶対入る』と言われ、気持ちを込めて蹴った」という林の言葉通り、すべてのキックが力強くゴールネットに突き刺ささった。
 ギリギリの戦いに勝って手にした初めてのタイトル。1部昇格に向けて、これ以上ない追い風になった。


5人目のキッカー松原志歩のPKが決まり、勝利!!

 【その後】
 2017なでしこリーグカップ2部決勝の舞台は、今年(2019年)と同じ味の素フィールド西が丘でした。暑い盛りの試合で、しかもPK戦。メンタルが試されました。先制しながらミスからPK、それを決められて追いつかれ……と不利な展開。監督の言葉通り、以前の選手たちなら気圧されてしまったかもしれません。でも5本のペナルティキックは選手の気持ちを乗せてゴールに飛び込みました。特に松原志歩選手のプレーぶりが頼もしかったのを覚えています。

文・横井素子